僕が学生(10年以上前)の頃から、全体構造法は興味はあったんですが・・・西日本で講習会やセミナーが中々開催されていなかったので、行く機会がありませんでした。国際医療教育研究所が、大阪で全体構造法のセミナーを開催するらしいので行ってみました。【参照元:国際医療教育研究所】
受講料が一万八千円と高額でしたが、開場には200名程度の言語聴覚士が集まっており、注目の高さが伺えます。
講義の内容としては、全体構造法の概論、身体リズム体操、となえうた、不連続刺激、ブローカー・ウェルニッケ・伝導失語の症例検討をいくつか行い、質疑応答にかなり時間をかけていました。
道関先生の講義は非常に分かりやすく、豊富な臨床経験に裏付けされた実体験は非常に刺激になりました。そして既存の言語聴覚療法を行っている身としては・・・非常に耳に痛い内容でした。認知神経神学的アプローチが主流の地域で、あの講義が出来るのは凄い(決して既存の言語訓練を全否定しているわけではないですよ、誤解が無いように聞きに行って下さい)。
今まで、講習会テキストや学校で習った絵カードや復唱、言語ドリルやフリートーク、身振り手振りを使った発話以外のコミュニケーション手段の指導、新聞コラムの写し等など、既存の訓練を患者さんに提供してきました。それしか教えてくれる人がおらず、周りの言語聴覚士の訓練やカルテ記事を見てそれでいいんだと安心していました。でも、治らない患者さんがいました。
「自分の腕の無さが原因なんだ」、患者さんに申し訳ないと感じながら仕事をしていました。ですが講義中に、重度な失語症患者さんが全体構造法で変わっていく動画を見て、もっと頑張ってみようと思いました。既存の訓練で「あー」とか「うー」しかボソボソ言えなかった維持期の患者さんが、治療方法変えたら普通にしゃべっているんですよ!会話を楽しんでいるんですよ!あの場面が自分の受け持ち患者さんに起きたら僕は泣きますよ。大泣きします。
全体構造法は「とりあえず、こうすりゃいいよの治療テクニック」じゃなくて、人間の言語の獲得の仮定から治療を考えています。何だか良く分からないけど、リズムをとって、STと患者さんが動きながら「となえうた」を歌ってるくらいの知識で講義を聞きに行ってきましたが、なんで今まで全体構造法の勉強をしなかったんだ・・・と、ショックを受けました。ちゃんと聞きにいかないと分かりませんよ、講義を聞く機会があるなら是非行って下さい。
日本全体構造臨床言語学会で講習会の案内があるようですね。学会の入会には理事の推薦が必要なようです。西日本で全体構造の活動が活発になったら、もっと勉強する機会が増えるんですが、東日本に比べると全体構造法の訓練施設も少なく学べる機会が限られてますね。道関先生の新刊が出たのでとりあえず購入してみました。内容は基礎編でも難しいです。
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本音を言えば、新しい治療方法や考え方を取り入れるのは勇気がいります。だって、今まで患者さんに提供していた訓練は意味が無かったじゃないか?と不安になるし、自分が長年頑張ってきたこを切り捨てるってのは悲しくなります。でも患者さんにとってプラスになるかもしれない治療方法があるのに、それを学ばない・試さないのは何か違うんじゃないかなと思います。あまり賢くない僕には、どの治療が正しいのか分かりません。ただ、教えて貰った通りに試してみるだけです。
結局、患者さんの治療成績が上がればどうでもいいんです。とりあえず明日から、母音のリズム体操の素振りでもしてみます(誰もいない言語室でこっそり一人で)。
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